後立山(長野/富山) 白馬岳(2932.3m) 2023年8月11日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 0:54 猿倉駐車場−−1:16 長走沢−−1:29 林道終点−−1:47 白馬尻小屋(トイレのみ)−−2:26 雪渓に乗る(標高1860m) 2:29−−2:41 秋道(標高1950m)−−3:45 避難小屋−−4:29 村営頂上宿舎 4:34−−4:52 白馬山荘−−5:09 白馬岳 5:59−−6:15 白馬山荘 6:19−−6:39 村営頂上宿舎−−7:14 避難小屋−−7:55 大雪渓に乗る(標高2020m) 7:56−−8:04 夏道(標高1800m) 8:06−−8:31 白馬尻小屋−−8:45 林道終点−−8:54 長走沢(水浴び) 8:57−−9:13 猿倉駐車場

場所長野県北安曇郡白馬村/富山県下新川郡朝日町
年月日2023年8月11日 日帰り
天候快晴
山行種類一般登山
交通手段マイカー
駐車場猿倉に駐車場あり
登山道の有無あり
籔の有無無し
危険個所の有無小雪渓の雪も消えて危険個所無し
山頂の展望晴れれば大展望
GPSトラックログ
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コメント高山植物の鑑賞&雪の減少が早く大雪渓が通行止めになる可能性を考慮して3週連続で白馬岳へ。2週間前より登山者数は少なかったが、それでもお盆休みに突入した好天日であり数100人とすれ違った。台風7号が来る前に入山した登山者も多かったと思う。九州沖を通過した台風6号の影響か、真夏にしては奇跡的な空気の透明度で、白馬岳から2度目の佐渡が見え、能登半島は初めて根本から先端まで見えた。雲海の上には尾瀬の山と日光白根が明瞭に見え、驚いたことに越後三山のずっと左側には飯豊連峰(距離約210km)、朝日連峰(距離約255km)まで見えていた。北アルプスで距離200kmを越える山が見えたのは初めてだった。夏の花はほぼ終わりに近くキキョウやトリカブト等の初秋の花に切り替わりつつある


白馬岳山頂から見た朝日連峰。寒江山までの距離は約255kmで私の経験では過去最長。
これまでは約170kmが最長だったので今回は劇的に視程が良かった


白馬尻。テントが2張あった ケルン付近(標高1640m)に雪は皆無
標高1740m付近で雪渓登場。
でも秋道を進んで1860m付近で雪渓に乗ったら遅すぎた
標高1950m付近で秋道登場。でも雪渓を登る
標高2020m付近で秋道に乗った 橋。水量は減っていた
避難小屋 村営頂上宿舎前の水場。今年はいつまで雪が残るか
村営頂上宿舎 ウルップソウの咲き残り
ミヤマキンポウゲ ミヤマクワガタ
白馬山荘のシルエット 白馬山荘
日の出待ちの人々 妙高山の右手から日の出
日の出を見つめる人々 白馬岳山頂
白馬岳から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
白馬岳から見た富山湾と能登半島。能登半島全体が見えたのは今回が初めて。
白馬岳から見た富山新港付近。火力発電所の巨大煙突が見えた
白馬岳から見た飯豊連峰(距離約210km)、朝日連峰(距離約255km)
白馬岳から見た朝日連峰(距離約255km)
白馬岳から見た飯豊連峰(距離約210km)
白馬岳から見た村杉半島の山々
白馬岳から見た利根水源山脈、尾瀬、奥日光の山々(クリックで拡大)
白馬岳から見た奥秩父
白馬岳から見た南アルプス(クリックで拡大)
白馬岳の影 黒部川河口
白山 下山開始
シコタンハコベ。花の形状は他に似た種類が多いが、葉の形状が独特なので葉で判別するのがいい
イワツメクサ チシマギキョウ
イブキジャコウソウ トウヤクリンドウ
タカネツメクサ ミヤマクワガタの実
おそらくカンチコウゾリナ。葉先が尖って葉側面の鋸歯が鋭い
おそらくミヤマコウゾリナ。葉先が丸く葉側面の鋸歯がほとんど無い
イワギキョウ タカネシオガマ
ミヤマアケボノソウ ミヤマウイキョウ
ホソバツメクサ シコタンソウ
シロウマオウギ。まだ咲いているとは思わなかった。花の色が真っ白で花の付け根に黒い毛があるのが特徴
下界のヒメジョオンみたいだがエゾムカシヨモギ たぶんタカネイブキボウフウ
トウヤクリンドウに似ているが背丈が高すぎる。シロウマリンドウっぽい ミヤマオトコヨモギ
ミヤマクワガタ ウメバチソウ
コマクサ タカネニガナらしい
水源の雪渓 イブキトラノオでいいか
テント場 旭岳
細かな種類は分からないがコゴメグサ タカネヨモギ
葉先が丸いのでミヤマコウゾリナっぽい ウサギギク
ヒメクワガタ ミヤマアキノキリンソウ。多数見られる
ミヤマリンドウ。チングルマに埋もれて生えている ハクサンフウロ
このお花畑はトリカブトが中心 村営頂上宿舎前から見下ろす
調査の結果、オノエリンドウっぽい。初めて見た クモマミミナグサ
イワオウギ。実が付いていた ハクサンフウロのお花畑
ヨツバシオガマの実。袋状に丸く膨らんでいる こんなところにもミヤマアケボノソウ
ミヤマアカバナかシロウマアカバナ 細かな種類は分からないがトリカブト
沢沿いにはメタカラコウ ヨツバシオガマ
タカネナデシコ ミソガワソウ
クルマユリ オニシモツケ
杓子岳と避難小屋 小雪渓
イワオウギ ヒメクワガタ
ミヤマタネツケバナ オオバミゾホオズキ
小雪渓付近はミヤマキンポウゲを中心とするお花畑 ミヤマキンポウゲ
標高2370m付近 標高2320m付近
たくさんの登山者とすれ違う シロウマアサツキ
標高2300m付近 キバナノカワラマツバ
先頭がルートを間違えたのか後続も大雪渓末端まで登ってきている。末端付近は既に雪が薄く、いつ崩壊しても不思議ではなく非常に危険
左岸秋道 標高2160m付近
標高2070m付近 ウサギギク
ウルップソウ 標高2020m付近。ここが今の秋道取付
大雪渓から秋道に乗り換えて登る人々 大雪渓に乗ると風が涼しい!
次々と登ってくる 標高1860m付近
標高1830m付近 標高1800m付近が大雪渓乗換場所
秋道を下る 短い雪渓横断。往路では秋道で高巻きした
標高1730m付近。大勢の登山者がアイゼン装着中 大雪渓を見上げる
ヤマガラシ オニシモツケ
ミソガワソウ おそらくメタカラコウ
標高1700m付近 ミヤマカラマツ
標高1680m付近 オオバミゾホオズキ
ミヤマアカバナだと思う ニガナ
シロバナニガナ タテヤマウツボグサ
オオレイジソウ 白馬尻
白馬尻から見た大雪渓 こんな場所でもエゾシオガマ
クロバナヒキオコシ。初めて見た アジサイ
林道終点 ヨツバヒヨドリ
テンニンソウかフジテンニンソウ 長走沢で水浴び
林道から見た白馬岳。ズームで山頂の人の姿が確認できた。逆に言えば山頂から林道が見える
メタカラコウ。標高が高いものと比較して花の穂が長い ソバナ
車が上がっていった 林道のショートカット道上部入口
ショートカット道。明らかに道 林道のショートカット道下部入口
猿倉第一駐車場。第二駐車場も満車だった


 お盆休みが始まった。昔なら勇んで長期幕営縦走に出かけるところだが、もう年齢的にそのようなことが手軽にできる状況ではないし、精神的エネルギーの低下が激しい。それに追い打ちをかけてのインフレ。今は幕営でさえ相当の金がかかるしガソリン代が・・・ というわけでここ数年同様に日帰りの連続と決めた。その最初はまたしても白馬岳。もう夏の花の最終盤で、今年は雪解けが早く大雪渓にクラックができて通行止めになるリスクを考慮すると早めに登った方がいいだろう。九州西の台風6号が少し心配であるが、予報では風を含めて北ルプスにはほぼ影響は無いようだ。

 山の日の前日の猿倉駐車場は既に半分以上埋まっていたが、日中でも日影になる「優良区画」に駐車できた。お隣も私と同様に車中泊で明日朝から登るようだが、お互いに静かで快眠できた。

 日の出の時刻に山頂に到着できるよう午前1時前に出発。まだ上がってくる車があるが出発する人の明かりは無し。お盆休み期間なら夜間登山者が他にいても不思議ではないが。林道を歩いていても前後に光は見えなかった。白馬尻には2張のテントがあったが下山時は無くなっていたので朝に撤収して大雪渓を上がったのだろう。

 この時期の大雪渓は雪解けの状況に応じてどこで雪渓に乗るか、どこで左岸秋道に乗るのかが日々変わるが、基本的な考え方は次のようなルートである。できるだけ右岸秋道を上がって秋道が雪に吸い込まれたら雪渓に乗り、左岸から岬のように突き出した白い砂礫の小尾根が登場したらそこに乗る。ただし、岸に接する雪渓の状況がシュルントが開いたりクラックが入ったりと危険なこともあるので、その辺は臨機応変に対応する必要がある。今回は標高1860m付近まで右岸秋道を辿ったが、この付近は岸の雪が薄くて危険であり、もう少し標高が低く傾斜が緩いところで雪渓に乗るべきであった。左岸の「岬」が登場したのは標高1900m強で、まだ安定した雪渓が続いていたのでアイゼンを脱ぐのが面倒でもう少し雪渓を上がり、陸へ上がる傾斜が急になる前にアイゼンを脱いで秋道に乗った。この時点でも前後に光は見えなかった。

 沢に架かる橋を渡って葱平の急な尾根に取り付く。イワオウギ等の夏の花はもう終わりに近く、ミヤマキンポウゲはほとんど見られなくなっていた。避難小屋を通過する頃には県境稜線の杓子岳付近に光あり。おそらく鑓ヶ岳方面への縦走だろう。傾斜が緩まりお花畑が広がるが、ここも夏の花は最終盤でトリカブトが目立つ。夏の花の中では例年通りハクサンフウロが比較的最後まで粘っていた。

 村営頂上宿舎前の水場で水補給。小屋前からは山頂目指して出発する登山者の光が見られた。今からだと山頂でのご来光に間に合うか微妙な時間帯だが、森林限界を超えているので稜線から日の出を見ることができる。白馬山荘東裏手の肩地形ではいつものように山荘宿泊者が多数日の出を待っていた。そして日の出。今日は東の空に雲がかかっていないのですっきりした日の出を見ることができた。

 2週間前よりは少ないが、それでも賑わっている白馬岳山頂に到着。台風6号の影響で湿った南風が入って空気の透明度は良くないと予想していたが、予想に反して早朝は素晴らしい遠望。まず気付いたのは能登半島が先端まで見えていたこと。これまでに経験なしだ。北東の日本海上には薄っすらであるが佐渡ヶ島が見えているではないか! 過去に佐渡が見えたことは2回しか無く、一度はここ白馬岳で、もう一度は爺ヶ岳からであった。残雪期や晩秋を含めて200回くらい北アルプスに登っているが、佐渡ヶ島が見えるほどの遠望は奇跡的と言えよう。

 八ヶ岳、富士山、南アルプスは明瞭に見えていて、南は中央アルプスに隠れる寸前の中ノ尾根山がかろうじて雲海から丸い頭を出している。東はこれまた雲海上に尾瀬や奥日光の山々、そして越後三山の左側にも延々と山並みが続いている。越後駒ヶ岳のすぐ左側は奥只見の村杉半島の山々で、その左の顕著な高まりは毛猛山。一度火打山にブロックされて再び現れた山並みは浅草岳や守門岳、そして川内山塊と思われたが、この辺りはアルプスから滅多に見えないので私の知識では同定できない。写真撮影して帰宅後にカシミールで確認したところ、驚いたことに飯豊連峰、朝日連峰が見えていたことが判明! 飯豊までの距離は約210km、朝日連峰は約255kmととんでもない距離。通常、北アルプスから見える最遠の山の距離は、条件がいい時で約170kmが限界である。これを大きく超えるのだから、おそらく私の山人生で二度と無い奇跡だろう。

 あまりの展望の良さに1時間近くも山頂に滞在してしまった。この間にひっきりなしに山頂に人がやってきては下っていったが、今日の奇跡的な展望がどれだけ貴重なことか分かっているのは私だけだろうな。この展望が普通だと思うと次回登った時にがっかりするかも。もっとも、近場の北アルプスだけ見えればいいのなら視程は100kmもあれば充分であるが。

 帰りは花の写真撮影しながら。例のごとく縦走路ではなく白馬山荘東から稜線東端を通る登山道を歩く方が多くの花を見られるので迷わず選択。秋の花であるイワギキョウ/チシマギキョウ、トウヤクリンドウが最も目立つ。暗い紫のミヤマアケボノソウがたくさん見られるのもここである。この花は白馬岳以外では見たことがない。もう終わったかと思ったシロウマオウギはまだ咲いていた。私が知る限り、シロウマオウギは白馬山荘周辺でしか気付かなかった。

 トウヤクリンドウに似た白い花だが妙にヒョロっとか細く背が高いリンドウの蕾っぽい花を発見。トウヤクリンドウの個性が強い株かなと思ったが、帰宅後の画像検索でどうやらシロウマリンドウだと判明。私が写真撮影した時はまだ日の出直後で日が低い時間であったため、花が閉じていたようだ。この他にも見慣れないリンドウを発見。形はトイヤクリンドウによく似ているが、色が全く違って花も葉も紫色。ネットで調べたらオノエリンドウとのこと。秋も含めてこれまで何度も白馬岳に登っているがこれまで気付かなかった。

 いつものように避難小屋を過ぎて傾斜が急になる頃に登ってくる登山者数が急激に増える。雲一つない快晴で樹林皆無なので太陽に焼かれながらは暑そうだ。下りの私でも暑くて汗が噴き出る。これだから夏場は夜間登山の方が涼しくて汗をかかず快適だ。

 大雪渓が下方に見えてくると、どういうわけか大雪渓末端から登山者がガレた斜面に取り付いているではないか。しかも後ろには人の列が延々と続いている。雪渓末端は沢で雪解けが進んで大穴が開いて雪が薄くなり、いつ崩壊してもおかしくない。過去に一度だけこの雪渓崩壊の瞬間に出くわしたことがあるが、落雷したかのような轟音で雪渓を見たらブリッジが崩壊した後だった。あれに人が巻き込まれたらヘルメットの着用に無関係に氷のブロックで圧死するだろう。

 このようなルートミスの原因はおそらく古いベンガラであろう。私が「岬」に取り付いた場所よりも先に古いベンガラが続いていた。ただし、通行止めのロープが「岬」へと導いていたはずだが、その意味が理解できなかったのだろう。通常の登山道のように道があればこんなことは起こらないのだろうが、雪渓の上では道は無いし、この時期の固く締まった雪では先頭だった私のトレースも残らない。私のように何度も白馬岳に登ってルートに詳しい方が稀な存在であり、大半の登山者は初めて大雪渓を登る人だろうから、ルートが分からないのも仕方ないかもしれない。登山口で現状のルートの説明をしっかりするしかないだろう。以前は白馬尻にその情報が出ていたが、コロナ以降は営業していないので情報も無い。このミスルートは下山者が正しいルートを下って雪渓に乗る地点に到達して以降は修正された。

 雪渓を快速で下って右岸に乗ると、その後に傾斜が緩い短い雪渓を横断するように歩いていた。往路ではここは秋道で高巻きしたが、帰りは涼しい雪渓をノーアイゼンで下った。傾斜が緩いので下りでもアイゼンは不要であった。

 秋道に乗ると雪渓を吹き降りる涼しい風から離れるので暑い! 相変わらず登ってくる登山者が多いので登山道脇に退避する時間も馬鹿にならないが、2週間前よりはまだ少ないと言えよう。林道終点に出てもまだまだ登りの人が多く、人目があるので長走沢での水浴びは控えめにやったがその間は人がやって来なかった。水浴びすれば体感温度は大幅に低下して汗は収まった。

 駐車場に到着するとさすがに満車。車に乗り込んで第二駐車場前を通過しても駐車場入口路側まで車で埋まっていて、工事中の発電所のある二俣の駐車場にマイカーは誘導されていた。お盆休みの好天だからなぁ。

 

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